事務所だより

2013.06.11更新

 久々の更新となり申し訳ありません。今回は,ある法律相談の内容について書きます。

「Aさんは不倫相手であるBさんにお金を貸しましたが,Bさんは返済日になってもお金を返してもらえません。この場合,AさんはBさんに対し,「お金を返せ」との請求ができるでしょうか。借用書はあるので,裁判所も請求を認めてくれると思うのですが...。」

 実際によくありそうな話ではあります。
 実は,このような場合,お金を貸した旨の証拠があっても,裁判所が請求を認めるとは限りません。

 ここで問題となるのは,このお金の貸し借りの合意(「金銭消費貸借契約」といいます。)が民法90条の「公序良俗違反」に該当するのかどうかという点です。

法律は,悪いことには手を貸さないよという建前をとっています。そのため,お金を貸す約束をしても,その内容が不法であったり(例えば,暴力団にお金を貸す,という内容),またその契約の動機が不法である場合(例えば,「覚せい剤を買うためと分かってお金を貸す」という場合),その契約は公序良俗に反するものとして無効になります。
 もっとも,②本来契約が無効であれば,そもそも契約はなかったことになるはずです。すると,お金を貸した人は,「お金を貸す必要がなかった」ことになります。そうであれば,貸主は借主からお金の取戻しを請求できることになりそうです。
 しかし,その取戻しを認めると,「法が,悪いことをしてしまった人に手を貸す」ことになってしまいます。そのため,法律上,原則的には取戻しが認められません(民法708条本文。これを「不法原因給付」といいます。)。
 
 ...よく分からなくなってきたかもしれませんが,ここまでお話したことを上のAさんBさんの事例で説明すると,こうなります。
①AB間の金銭消費貸借契約が公序良俗に反する場合,契約は無効となる。
②そうすると,お金を貸していたAさんは,Bさんに対し,お金を返してもらうように請求できそうですが,民法708条によりそれができなくなる。
(反面,金銭消費貸借契約が公序良俗に反しなければ,Aさんはお金を返してもらえる。)


 では,AB間のお金の貸し借り(金銭消費貸借契約)は,公序良俗に反するのでしょうか
 その判断の基準は,「Aのお金の貸付が,不倫関係の維持のためかどうか。」というものです。
例えば,AさんがBさんの気持ちをつなぎ止めるために援助をしたということであれば,「不倫関係を維持するため」にお金を貸したといえます。そのため,Aさんのお金の貸付けは公序良俗に反することになります(Aさんはお金を返してもらえません。)。他方,AさんがBさんにお金を貸した理由が,手切れのためであったり,不倫関係が終了した後に貸し借りが行われていたり,あるいは全く別の目的により貸したことが明らかな場合には,少なくとも「不倫関係維持」と結びついたとは言えないので,公序良俗に反していない(Aさんはお金を返してもらえる)ということになります。

 Aさんの貸付が「不倫関係の維持のため」かどうかは,お金の使い道や金額,AさんとBさんの不倫関係の時期,AさんとBさんの関係などから判断されることになります。私の印象としては,「裁判所は,不倫相手にお金を貸した場合には,原則『不倫関係維持』のためのものと判断し,そうでないという証拠が提出できるときに限り,『不倫とは関係がない貸し借り』と判断しているように思います。

 ですので,「不倫関係にある人に貸したお金を原則返ってこない。」と考えた方がよさそうですね。

投稿者: 松本・板野法律事務所